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迷宮FX

ユキヲくんとセンパイの楽しくキケンなFXライフ

第7話 美しき世界 〜チャート

FX 小説 ノベル

これまでのあらすじ:
後輩の初心者FXトレーダー ユキヲに呼び出された安藤は彼の部屋へ向う。そこで安藤が見たものは… ユキヲの変わり果てた姿だった(ちょっとウソ)
詳しくは『迷宮FX』1〜6話を!


◆ ◆ ◆


夜更け過ぎ、スマホの地図を表示させながらしばらくウロウロしたが、なんとか目的のアパートにたどり着いた。

入口で部屋番号を押すと「はいよ」という声とともに自動ドアが開く。
追いかけるように「ドア開けとくよ」という声。
中に入ると部屋番号が振ってある簡略化された地図を見て、エレベータを目指す。
フロアの廊下をまたウロウロし、結果番号の書かれたドアの前に着いた。
云われた通り鍵はかかっていない、中に入る。

「センパイ来ましたよ〜」
いい所住んでいるじゃないですかー、と叫びつつ靴を脱いだ。
返事が無い。
自分用に出してくれてあるらしいスリッパをひっかけて中へ進む。

リビングらしき部屋のに安藤らしき人がいた。PCに向って椅子にかけている。
「あの〜 センパイ?」
近づいて行きディスプレイを一緒に覗きこんだ。

チャートが映っている。

「美しいとは思わないかい?」
片手に持っていたコーヒーカップを口元に運びつつ安藤が云った。


◆ ◆

「はあ」

ドル円月足らしきものをウットリと眺める安藤。
「ほらこれが、ダマシの無い世界だ」

株式のチャートにはない美しさだ。とつぶやく。

「へえ」

「この曲線美、よいね」

「そうすか」

ユキヲは思った…
マッドサイエンティストならぬ、
『マッドチャーティスト』は存在する、 と。

「はい、お土産兼講習代です」
差し出されたコンビニ袋を嬉しそうに受け取る安藤。
「おおサンキュー、ビールだビール」と云いながら冷蔵庫へと立ち上がった。

デスク側の壁一面にプリントアウトしたチャートが貼ってある。特に書き込みもない、様々な通貨ペアのものが並んでいた。

安藤が500缶とグラスを持って戻ってきた。

「センパイ背中に『チャート命』、とか彫っていないですよね…」

「ばかを云うな、そんなのはチャート愛じゃないっ」
「はぁ、じゃ、どんなのですか」

「毎年元日に、前年の四本値を一本ずつ背中に刻んで行くんだ」

さらに云う、
「そうだ、陰線だと痛さ倍増だ… 塗り潰すからな… 痛みに耐えつつ前年の相場の反省をするんだ」

ユキヲは思った…
ヘンタイも存在する。 と


◆ ◆

「さて今日はチャートの話をする」
「ハイ、お願いします」
「チャートのみでこの章は終る予定だ」
「…章ってなんですか」

まあいい、とつぶやく安藤センパイ。
もしかしてとんでも無い所に来てしまったのか? ユキヲはちょっと思った。

「さあ、なんでも訊きたまえっ! さあっ!」

「では、」

「『エリオット波動』って何ですか?」

「・・・」

「・・・それはまたな」

「弱いところを突きましたかね…」

(つづく)

■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。魔窟へようこそ。
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。マッドチャーティスト、背に彫ったのはドル円でしょうか?

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第6話 好みのタイプは? ~会社選び

FX 小説 ノベル

「センパイ、あとひとつだけ」
「なんだよ、もう眠いんだよ、帰るんだよ」
「ひとつだけですからー」

「FX会社ってどこが良いんですか?」


◆ ◆

「『良い』ってなぁ、人それぞれニーズが違うからなぁ。比較サイト見てみたら?」
「ぬぬぬ、では、質問を変えます」

「センパイ、何を期待してFX会社を選びますか?」

「ほほう、確信を突いてきたな」
安藤はアゴのあたりを撫でつつすこし考える。

「そうだなぁスプレッドはどの会社も下がっているし、使い勝手かなぁ」
「トレードのしやすさですか?」

「そうだね今だとスマホでのトレードがほとんどだから、アプリの作りにかなり左右されているかな」
「僕もスマホが中心ですね、家でPC取り引きツールを立ち上げる時もありますけど、」
スマホの方がシンプルで使いやすい、だろ?」
「ハイ」

「PCのツールは機能盛り込み過ぎなんだよな」
「そんな感じはありますねー」

「ざっと挙げてみるぞ」
つらつらとノートアプリにリストを始める。

FX会社選びの条件(例):

  • スプレッド: あまり差はない
  • 手数料: 基本どこも無料
  • デモ口座: たいていどこでも開ける
  • レバレッジ: 日本であれば 25倍。海外は100倍以上のところも
  • 取引ツール: 使い易いか、分かり易いか
  • スマホ: デモアプリがあるか、取り引き画面の使い勝手、ポジションの変更方法
  • 取り引き方法: トレール、トラリピ、システムトレード、MT4
  • チャート: 使いやすいか、よく使うインジケータがあるか
  • 約定力: 良いか?
  • 資金: 初回入金に下限があるところも
  • 入金方法: 「クイック入金」できる所が多い、大手銀行なら問題ないはず。海外送金になると敷居がちょっと高いかも
  • レポート: 充実しているか、お気に入りのアナリストのレポートが読めるか
  • ニュース: ダウジョーンズ、グローバルインフォ、MarketWin24 などどこが読めるか
  • サポート: 電話サポート、日本語か、無料セミナー

「どうだろう?」
「半年目くらいの初心者でも、やっぱりアプリの使い勝手が大きいですよね」
「アプリの話を始めると長くなるので、まあまたな。エントリ方法が分かり易いのもあるけど、エントリ後のオーダー変更方法が分かり易いのも重要だね。SL、TPをちょこちょこ修正するだろ?」
「なるほどー」

「約定力ってのは?」
「よく謳い文句にあるだろう?」
「まあ見ますけど、使ってみなきゃ分かんないですよね」
「うん」

「センパイ、海外送金ってしたことあります?」
「やってみたことはある、というレベルだけどな。FX始めてみました、口座作ってみました、という人にはちと難しいかもしれないね、そんなところでつまずいても面白くないし、ひとまず国内の会社で始めてみるんじゃない?」
「でもハイレバレッジで始めたい人はいるでしょうねぇ」
「初心者はレバレッジはかけないのっ」

「チャートって、インジケーターの種類ですか?」
「それもあるけど、おれの場合はチャートに思い通りに線が引けるかが一番大事だな」
「トレンドラインですか」
「そう、そしてそのラインを保存できるかどうかでほとんど選択肢は無くなる」
「僕はあんまりトレンドラインって引いたりしませんけど、日本製のアプリはほとんど全滅じゃないですか保存できるかってなると」

んだなぁ、と安藤は飲み干したビール缶を右手で (クシャ) と潰した。
まだまだ使えるツールはあるんだろうけどなぁ、とつぶやく。

「あとはサービス品とか」
「口座開くと商品がもらえるところもありますね、」
「なんかもらった覚えがあるけど覚えてないなぁ…」

「じゃあキャラクターはどうよ、」
「プライヌくんとか、トラリピくんとか…」
「いや、CMキャラクターよ。さいきんはキレイな女優さんがやってるだろ? よく知らんけど」
「アリかもしれませんねー、GMOクリックとか外為オンラインとか」
「そういや、大島優子がエロいCMやってたな」
「なんども見ました、サイト行って」

「とっかかりは何でもいいからひとまず口座を作って、デモってみるんだな」
「ですよね」
「そうするとやっぱりスマホのデモアプリがあるかどうかがけっこう大きいな、やっぱり」
「YJFX か、外為オンライン、LION FX、とかですね」
サイトを調べながらユキヲ

「まあいくつか使ってみればいいじゃない、口座作るのはだいたいタダだしな」
「リアル口座は手続きがちょっと面倒ですけどね」


◆ ◆

「さておれは帰るぞ、」
「ハイ、おつかれさまでした」
「ホント、なんか疲れたわ」
ノートをバッグに片付け始める。

それを眺めていたユキヲ、ふいに思い出したように云った。
「あ、センパイ!! あと、スワップってのは、、、」

「もうしらん!!、帰るっ またなっ」
スタタと部屋を横切ると、

バタンとドアが閉まった。

よく呑んだなぁとつぶやきながら、ユキヲは床に転がったビール缶を数え始めた。


◆ ◆

今宵、ここまで。


■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。被害妄想はもう大丈夫?
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。それでけっきょくどこの会社を使っているんだろう…

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第5話 すべって転ばないように… ~スリッページ

FX 小説 ノベル

「たいていのFX本は『指値注文』から説明されている」
「そうですね」
「あたかも指値がスタンダードな方法の様に」

「そのわりに『初心者はまずトレンドに乗ることから考える』とかあって、」
「そうですね上り調子のチャートが図で入ってて『ここで指値だ』ってあっても、よく分からない感じになります」
「チャートが右肩上がりなのに、下がったら買おうって云ってるんだなぁ」

『トレンドに付いていきたいんだけど、どうして下で買うの?? 上がってるんだってば』

「てことになる」


◆ ◆


「センパイ、指値・逆指値の話はついに理解できました」
「ついにって、大丈夫か? 売りの場合もイメージできた?」
ぐびっとビールをあおって「ハイ!」といい返事。

「…大丈夫かよ」
「それでついでといってはなんですが、他にも訊きたいことが」
『スプレッドって何ですか?』とか云うんじゃないだろうな」
「いやスプレッドは分かります、、タブン。手数料みたいなもんですよね」
「うんそう、bid と ask だな」

「びっどとあすく?」

ずっこける安藤。


「メジャーな通貨ペアはスプレッドが狭い 0.3とか 0.4とかな」
「そうですね、ユーロドルは 0.6とかですね、お、オージードルが 1.4 です」
「まあ需要のある通貨ペアのスプレッドは狭い、マイナーなペアは広いってところかな通貨ペア選択には重要な数字だ」
「でもドル円ばっかりやってればほとんど関係ないですねー」
「そうか? 雇用統計のときとか (がっ) と拡がるぞ」
「そうなんですか、どうしてです?」
「買い方、売り方 のバランスが崩れるとかで取引が成立しにくくなるとかだね」

「ask で買って、bid で売る。エントリは不利な方の値で開始するってことだ」


◆ ◆


「訊きたかったのはスバリスリッページです」
「似たような話だったな…」

「スプレッドはエントリ時より不利な方にズラされるイメージ、」
「ええ」
スリッページは注文時に価格よりズラしてよい許容値だ」
「???」

「ああゴメン、スプレッドと似た感じと思ったけど、そうでもないか…」
「ずらして良いってのはどういうことですか」
「たとえばだ、」

f:id:ulittlegray:20150324160810j:plain
(iPhone cymo デモアプリ)

「ドル円のエントリだ、スリッページ 『1.0 pt』にすると…」
「『pt』は pips で良いんですよね」
「うんいい。この状態でロングポジションを持つとする。成行 119.60 な」
「はい」

「119.60で約定するよな」
「そりゃそうです」
「でもピッタリ 119.60 かというとそうじゃないかもしれない」
「へ?」

「119.61 までは許容しているんだよ」
「ああー」
「スリップするときがあるんだ、約定価格が。1pipsずれたがエントリできた」
「なるほどーそれで (スリッページ) ですか」

「『0』pt に設定しておけばいいじゃないですか?スリップしないように」
「0 に設定できるかどうかは、アプリ仕様や会社の方針だと思うが、仮りに『0設定』できたとして、もし取引状態が良くなくってすべって約定ができない場合が発生する」
「……どうなるんですか」
「いつまでたってもエントリできない」
「おおう」

「まあ状況がよくなれば約定できると思うけどね」
「どういうときになるんですか? そんな状態に」
「分かり易いのはやっぱり雇用統計とかかな、変動幅が大きすぎてスリッページ 1pt とかじゃぁ追従できないかもしれない」

「あとFX会社がわざとスリップさせて約定させるなんて話も噂ではある」
「えー、そんなのどうしようもないじゃないですかぁ」
「しっかり会社を選択せよということになるな」

今夜のところはこのくらいにしておこうか、と安藤は立ち上がった。

(つづく)


■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。もうすべっても大丈夫?
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。ここまでビールが何本空いているのか。

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第4話 さしつさされつ 〜指値・逆指値

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「それでツールはなに使ってる? iPhone?」
「はい、Cymo*1 のデモアプリです」
「ふむ、Cymoは早くからデモアプリがあったし、いいんじゃない」

「話は戻るけど」
「ハイ」
指値注文をあんまりしないのか?成行ばっかり?」
「…そうですね」
「どうして?」
「どうしてってこともないですけど、逆指値は必ず入れてますよ」

「実は…よく分かってないだろ?」
「うっ」

f:id:ulittlegray:20150317092110j:plain

「ドル円4時間足、アップトレンドにラインを引いてみた、どう思う?」
「雲に触れる辺りで買いたい感じすかね」
「そうだな。お前、そのあたりに来るまでまでチャートの前で待機してんの?」
「はい、見てますね」
「4時間足見てるんだよ」
「あそうか、もっと短いチャート見ますね」
「うむ、要するにそういうことかスキャルピングなんだな」
「数時間持っている時もありますよ」

「いつもどの時間のチャートみてる?」
「時間足から5分足ですね、たまに1分足も」
「ティックか、確かにそれなら指値は不要だなぁ」

「この話は忘れてくれ」
「そんなぁー、教えてくださいよ」
すがりつく…


◆ ◆

「俺らサラリーマンは一日中チャートに貼りついているわけにはいかない、そうだよな」
「はい」
「そこでリーブオーダーをしておく」
「『リーブオーダー』というのが『指値』『逆指値』注文のことなんですね」

「先ほどのチャートで 121.20 で買いの指値 を入れてみるぞ」

ユキヲiPhone cymoデモ画面
f:id:ulittlegray:20150317093934j:plain

はぁ、と気の抜けた感じの声を漏らす。
ニヤリと安藤。
「ここまでは分かるだろう? 買いたいので指値をした。では売りたいときの指値はどうやる?」
「…逆のことをする」
「うんそう、売りのときは下るだろうと見たときに現価格より上に指値を入れる」
「…ええと、」

「さて次は逆指値の話な、買いの場合はー、」
「ちょ、ちょと、待ってください…」

「ネをあげるのはやいな…」

「エントリした後、ストップロスのために逆指値を入れるというのは分かっているんですけど」
センパイに散々云われましたから、とユキヲ
「エントリで逆指値というのがよく分からない…」

「ふむ、話を指値に戻すぞ、」
と云いながら簡単な図を紙に書く安藤。

【パターン1】
f:id:ulittlegray:20150318164527p:plain

指値の解説でよく見る図である。
「実線が相場の動き、赤丸が現在値。予想した動きが点線な」
「はい、買いの指値をするパターンですね」

f:id:ulittlegray:20150318164544p:plain

「青丸で指値をする。でいいよな」
うなずく。

「そしたら、こっちの場合はどうなる?」

【パターン2】
f:id:ulittlegray:20150318170458p:plain

「下がらないでそのまま上昇を予想したということですね」
「そう」

f:id:ulittlegray:20150318171127p:plain
「ここで買いたいです」

「うん、これが『逆指値』」
「分かったような… 分からないような…」

「シンプルだよ。現在価格より、下で買うなら指値。上で買うなら逆指値

「では、売りの場合はどうだろう」

ユキヲがすぐに答える。
現在価格より、上で売るなら指値、下で売るなら逆指値
「そのとおり」

「そこまでは理解した覚えがあるんですけどねぇ、どうしてわけ分からなくなっちゃんだろう…」

「それはアプリの注文画面の問題なんじゃないかと思う。一画面に色々詰め込んであるのが多いから。よくわからんって人は成行ばっかりやることになる。」
そう、キミだ。と指さされる。

「いいか、リーブオーダーは4種類しかない、オーダー前に何をしようとしているのか分かっていれば迷うことはない」

  1. 買い指値注文
  2. 買い逆指値注文
  3. 売り指値注文
  4. 売り逆指値注文

「なるほどー、」

「でも、逆指値したいときってどういう時ですかね?」

「これならイメージ湧くんじゃないか」
f:id:ulittlegray:20150318181509p:plain

「レンジブレイク狙いだ!!」

(つづく)

■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。リーブオーダーを覚えたぞ。
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。今回は真面目な話ばっかり。

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*1:http://cymo/ いつの間にかCyberAgentから、YJFXになってた。

第3話 鉄のオキテがあるのだよ 〜マイルール

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「ま、レバレッジの話はまたの機会にしよう」

「それよりまだ大きな問題がある」
「なんですか? センパイ」

「それだ」
発泡酒の缶を指さしているようだ。
ユキヲは首をかしげ、

(はっ)
「志高く発泡酒はやめてビールにせよと?」
ぱしっ!
頭をはたかれる。
「イタイ!」
「なんで酒飲みながらトレードしてんだよオマエは!!」

はたかれたあとをさすりながらユキヲは云う。
「僕みたいな小心ものは、勢いが無いとポジション持てないんです…」

「だめだ、酔拳が許されるのは、○永○夏くらいだ」
「…誰ですか」

トレードルール(例):

  1. 酒を飲みながらトレードしない
  2. 体調が悪いときは休む
  3. 仕事中はチャートを見ない
  4. ストップロス(逆指値) は必ず入れる
  5. 損は取り戻せない

「酔っ払いトレードはまずうまく行かないし、ヘタに一度うまく行ってしまったら気が大きくなって大負けするまでやめられなくなる」
「はあ、まあ、覚えはありますけど」
「だろ?」

「自分自身のコンディションが良くない時は素直に休むってのも大事だ。相場は逃げない」
「なんかテンション上げたくってエントリしたりねー」
「それでうまくいったのか?」
「……」

「あと仕事中はやめておく」
「ドキっ」
「ボジションが気になって仕事に集中できないだろ」
「むむむ」
「トイレの個室でトレードしてるんじゃないだろうな」
「へへへー」

「へへへ、じゃねぇって」
「ふむ、なるほど、これらを守って慎重なトレードをしているんですねセンパイは」
「そういうことだ」

(回想 〜 昨晩のセンパイ〜)

「あははは、いーじゃんいーじゃん、これは下げるね、絶対下げるねー。おりゃー! ショートぉぉ」ぐびぐびぐび ←飲んでる

(数分後)

「ぎゃあああああ、ふまれたー!!」

(回想おわり)

「『損は取り戻せない』ってどういうことですか?」
「まぁ負けるだろ」
「はい」
「そうしたらチクショーとなって負け分取り戻そうとするだろ」
「そりゃそうです」
トレードは一回一回別物と思った方がいい、負けても次に勝つようにすればいいだけのことだ。今の負けを取り戻そうとかするとロクなことにならない」
「そうかなぁ」

「負けたあと取り戻そうとするとどうする?」
「ドテンしますかね」
「まあそれでうまく行くときもあるが、冷静じゃないだろうから変なことするんだよ。たいてい」
ナンピンするとかも」
「頭に血が登ってるときにナンピンとかもっての外だね」

「だめかぁ〜」
だめっ、目の前に手でばってんを出される。
「まあ、これは最低限のことだ、更に自分用のルールを決めてみる」
「たとえば?」

  1. 就業中はニュースサイトでレートのチェックまで
  2. ランチ中であればSL(ストップロス)を動かすくらいはよい (エントリは禁止)
  3. SLが利確ラインを越えたら、酒を始めてよい。イジって損するもヨシ

「チョット緩くなってません?」
「まあこのくらいの遊びは必要かな、楽しむことも目的のひとつだからね」
「楽しむことですか」

「まさかそんな状況で日々儲けが出せるとか思ってんじゃないだろうな」
「うううだめですか」
「だめじゃないけど、マジにやりすぎると続かないもんだ」
「てきとーにですか?」
「そうじゃなくて楽な気持ちでしばらく相場とつき合ってみる、というのがいいんじゃないか。ちょっとくらいやったところで身にはつかないよ」
「そういうもんですか」

そういうもんだね、と云うと安藤はビールをグイッとあおった。

(つづく)

■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。ルールが大事、ひとまずセンパイの云うとおりにしてみようか。
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。回想は裏の顔か。

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第2話 デモドリトレーダーのフトコロ事情 〜資金管理

FX 小説 ノベル

「まず聞こう、いま資金はいくらくらいなんだ?」

「2,500,000円が40万ほど減りました」
「デモじゃなくて」

「えええーリアルですか、云わなきゃダメですかぁ」
「進まないから早く云いなさい」
安藤はテーブルに座るとカバンからノートPCを取り出して勝手にコンセントに電源を差した。

「30万円です」渋々とユキヲ
「最初は50万あったんですけど…」

「なるほど、その出所は?」
「去年伯母の遺産が入ったのでそこから出しました」
「ほほう、そんな話もあるんだねぇ」

「センパイ、どんなお金かって重要なんですか?」
「不要だ (キッパリ)」

「ううう (涙)」

「リアルで開始したのが半年前くらい?」
「はい」
「9月かな、この辺りか」(ドル円日足 青矢印)
f:id:ulittlegray:20150305093211j:plain:w400

「良い上げを経験してるじゃないか。まあこれで調子に乗ったってことか」赤矢印を指さしながら云う。
「おっしゃる通りです…」

「当初は50万円スタート、か、どういうやり方をしてた?」
「どういうって、『上がるなー』と思ったら買う。『下がるなー』と思ったら、、、」
「チャートを見て?」
頷くユキヲ

「ふむ、上がるぞと思ったらその場でロング、指値とかは?」
「基本しないです」
「何枚?」
「は?」
「何通貨で勝負してるんだ?いつもは、ロット数だよ」

ユキヲの (ばっ) と広げられた両手を見て。

「10万通貨?」
「はい」
「…たしかに50万あったら10枚持てるかもしれないけど、ほとんど全力じゃないか」
「えっ、そういうものなんじゃないんですか? ハイリスクハイリターンなんだから、そういうものだと思ってましたけど」
「もちろんそういうやり方もあるだろうけど…」
「はい、」

「失くなったろ?」
「… …はい…」
「伯母さんの遺産だいぶ失くしたろ?」
「うぅっ 」

冷蔵庫から出してきた発泡酒の缶を開けた。観念したようにユキヲも自分の缶を持ってテーブルへ移動して来る。

「お前に必要なのは資金管理」
「はあ」
「証拠金に対して、3%から5%ってのが一般的だ。まず3%で考えよう」*1
そう云うとPCのキーボードを打ち始める。それを横から覗き込むユキヲ

300000 * 0.03 = 9000円

「9000円?」
「今、一度のトレードで損失を許容できる金額だ」
「はあ、それが?」

「ちなみにキミが最近なくした伯母さんの20万円」
「もう云わないでください」

100/3 * 200000 = 6666666.6円

「666まんえん、なんですか?」
「一発で20万トバしていい人の資金額だ」

がっくりと肩を落とすユキヲ

「ちなみに、50万円時代の場合」

500000 * 0.03 = 15000円

「証拠金が減ったことで許容損失金額も減ったということだ、分かり易い」
「えーと、つまりこの金額がなんだというのですか?」

損切りのラインがおのずと決まるということなんだけど、ピンと来ないかい?」
「ああー、ストップロスのサイズということですか」ぽんと手を打つ。

「そういうこと。50万あったころは、ドル円なら 1万通貨つまり1ロットで 150pips まで、
2万通貨ならば半分の 75pips、3万通貨なら 50pips」

「僕が実際やってた10万通貨だと… 15pips」
「そう」
「浅いです。あっという間に持っていかれますよ」
「うん、そうならないようにポジジョンのサイズを調整するということだな。ストップの幅で自ずとロット数は決まってくる」

なるほど~ とユキヲは深く頷いた。

「ストップはどの位にしていたんだ?」
「一律50pipsです」
「ううむ、50万円入れてた時でもSL50pipsなら3万通貨しか持つべきじゃなかったんだなぁ」

「なんか儲かる気がしなくなってきました…」
「10枚張ってたんならまあそんなかんじかもな」

「あ、そこで『レバレッジ』をかけるのか」
「それはまた全然違う、確かに海外の会社なら100倍とかレバレッジを設定できる所もあるけど、僕らはバクチ打ちじゃないからね

(つづく)

■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。少しは資金管理のことが分かったかな。
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。

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*1:2%以下にするべきという人もいます。そこはトレードスタイルによって変わってくるでしょう。資金内容や量によっても。

第1話 リーマントレーダー出戻りす 〜序

FX 小説 ノベル

アパートの階段を上がって見慣れたドアのチャイムを押す。
(ピンポーン)
来訪の時にはいつも解錠されているのでそのままドアを入った。

ユキヲー、きたぞー」と云いながら靴を脱ぐ。
なぜか部屋の中が暗い。

コンビニでも行ったのかなと短い廊下を通って部屋に入り、壁のスイッチをオンに、
「なんだよいるじゃないか、電気も点けずに一体なにを…」

「センパイィィ、だめです!奴らに見つかりますっ、電気を消して!!」

PCの前布団をかぶって怯えた表情でこちらを見てくるのは部屋主のユキヲ

「…なんのマネだこれは」
「ヤツらに監視されているんだ僕は、『買え』ば落ちる、『売れ』ば上がる! 絶対見てるっ、どこだ!どこにいるんだ!」(血走った目でキョロキョロ)

…こいつぁ
疲れているんだな…
あとサケな…

床に転がっている発泡酒の缶。
安藤は彼の目の前のディスプレイを覗き込んだ。

-415,870

「ほうほうこれはまた豪気な負けっぷり」
たった今決済したらしい赤い文字。

「見てるんだ、見てるんだ、みてる… xx◯x… 」
本気なのか冗談なのかよく分からない調子で繰り返す。

そんなユキヲの頭を(パンっ)とはたく、

「その額なら、どうせ『デモ』だろう? なにマジになってんだよ」
「そうですよそうですけど、僕がデモトレードに戻ってきたのには理由(ワケ)があるのです」

「おおかた、リアルトレードで大負けして、怖くなってちょいとデモトレードで練習し直そうかな、といったところだろう?」
「ちきしょー 正解です!」

「しかも彼女にフラれましたっ」
「ふむ、、おおかたデート中にスマホでチャートばっかり見てたんじゃないのか?」

(ふるふるふるふる)
「おまえかー、僕を監視してたのはオマエかー」

「首を締めるなっ、、『おまえ』とはなんだおまえとは!」
おちつけと頭を再度はたく。

「まあ大ヤラレしてもめげずにデモからやり直そうってのは悪いことじゃない、どれ、何が悪かったのか検証してやるから、状況を話してみたらどうだ?」
「センパイぃぃ」熱い視線。

「ちなみにリアルトレードで (けちょんけちょん) にヤラレてデモからやり直しを計ることを『デモドリ』と云う」
「へえ、そうなんですね」

「そんなわけあるかっ (キッパリ)」
「………」

(つづく)


■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。
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