迷宮FX

ユキヲくんとセンパイの楽しくキケンなFXライフ

第1話 リーマントレーダー出戻りす 〜序

アパートの階段を上がって見慣れたドアのチャイムを押す。
(ピンポーン)
来訪の時にはいつも解錠されているのでそのままドアを入った。

ユキヲー、きたぞー」と云いながら靴を脱ぐ。
なぜか部屋の中が暗い。

コンビニでも行ったのかなと短い廊下を通って部屋に入り、壁のスイッチをオンに、
「なんだよいるじゃないか、電気も点けずに一体なにを…」

「センパイィィ、だめです!奴らに見つかりますっ、電気を消して!!」

PCの前布団をかぶって怯えた表情でこちらを見てくるのは部屋主のユキヲ

「…なんのマネだこれは」
「ヤツらに監視されているんだ僕は、『買え』ば落ちる、『売れ』ば上がる! 絶対見てるっ、どこだ!どこにいるんだ!」(血走った目でキョロキョロ)

…こいつぁ
疲れているんだな…
あとサケな…

床に転がっている発泡酒の缶。
安藤は彼の目の前のディスプレイを覗き込んだ。

-415,870

「ほうほうこれはまた豪気な負けっぷり」
たった今決済したらしい赤い文字。

「見てるんだ、見てるんだ、みてる… xx◯x… 」
本気なのか冗談なのかよく分からない調子で繰り返す。

そんなユキヲの頭を(パンっ)とはたく、

「その額なら、どうせ『デモ』だろう? なにマジになってんだよ」
「そうですよそうですけど、僕がデモトレードに戻ってきたのには理由(ワケ)があるのです」

「おおかた、リアルトレードで大負けして、怖くなってちょいとデモトレードで練習し直そうかな、といったところだろう?」
「ちきしょー 正解です!」

「しかも彼女にフラれましたっ」
「ふむ、、おおかたデート中にスマホでチャートばっかり見てたんじゃないのか?」

(ふるふるふるふる)
「おまえかー、僕を監視してたのはオマエかー」

「首を締めるなっ、、『おまえ』とはなんだおまえとは!」
おちつけと頭を再度はたく。

「まあ大ヤラレしてもめげずにデモからやり直そうってのは悪いことじゃない、どれ、何が悪かったのか検証してやるから、状況を話してみたらどうだ?」
「センパイぃぃ」熱い視線。

「ちなみにリアルトレードで (けちょんけちょん) にヤラレてデモからやり直しを計ることを『デモドリ』と云う」
「へえ、そうなんですね」

「そんなわけあるかっ (キッパリ)」
「………」

(つづく)


■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。
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