第6話 好みのタイプは? ~会社選び
「センパイ、あとひとつだけ」
「なんだよ、もう眠いんだよ、帰るんだよ」
「ひとつだけですからー」
「FX会社ってどこが良いんですか?」
◆ ◆
「『良い』ってなぁ、人それぞれニーズが違うからなぁ。比較サイト見てみたら?」
「ぬぬぬ、では、質問を変えます」
「センパイ、何を期待してFX会社を選びますか?」
「ほほう、確信を突いてきたな」
安藤はアゴのあたりを撫でつつすこし考える。
「そうだなぁスプレッドはどの会社も下がっているし、使い勝手かなぁ」
「トレードのしやすさですか?」
「そうだね今だとスマホでのトレードがほとんどだから、アプリの作りにかなり左右されているかな」
「僕もスマホが中心ですね、家でPC取り引きツールを立ち上げる時もありますけど、」
「スマホの方がシンプルで使いやすい、だろ?」
「ハイ」
「PCのツールは機能盛り込み過ぎなんだよな」
「そんな感じはありますねー」
「ざっと挙げてみるぞ」
つらつらとノートアプリにリストを始める。
FX会社選びの条件(例):
- スプレッド: あまり差はない
- 手数料: 基本どこも無料
- デモ口座: たいていどこでも開ける
- レバレッジ: 日本であれば 25倍。海外は100倍以上のところも
- 取引ツール: 使い易いか、分かり易いか
- スマホ: デモアプリがあるか、取り引き画面の使い勝手、ポジションの変更方法
- 取り引き方法: トレール、トラリピ、システムトレード、MT4
- チャート: 使いやすいか、よく使うインジケータがあるか
- 約定力: 良いか?
- 資金: 初回入金に下限があるところも
- 入金方法: 「クイック入金」できる所が多い、大手銀行なら問題ないはず。海外送金になると敷居がちょっと高いかも
- レポート: 充実しているか、お気に入りのアナリストのレポートが読めるか
- ニュース: ダウジョーンズ、グローバルインフォ、MarketWin24 などどこが読めるか
- サポート: 電話サポート、日本語か、無料セミナー
「どうだろう?」
「半年目くらいの初心者でも、やっぱりアプリの使い勝手が大きいですよね」
「アプリの話を始めると長くなるので、まあまたな。エントリ方法が分かり易いのもあるけど、エントリ後のオーダー変更方法が分かり易いのも重要だね。SL、TPをちょこちょこ修正するだろ?」
「なるほどー」
「約定力ってのは?」
「よく謳い文句にあるだろう?」
「まあ見ますけど、使ってみなきゃ分かんないですよね」
「うん」
「センパイ、海外送金ってしたことあります?」
「やってみたことはある、というレベルだけどな。FX始めてみました、口座作ってみました、という人にはちと難しいかもしれないね、そんなところでつまずいても面白くないし、ひとまず国内の会社で始めてみるんじゃない?」
「でもハイレバレッジで始めたい人はいるでしょうねぇ」
「初心者はレバレッジはかけないのっ」
「チャートって、インジケーターの種類ですか?」
「それもあるけど、おれの場合はチャートに思い通りに線が引けるかが一番大事だな」
「トレンドラインですか」
「そう、そしてそのラインを保存できるかどうかでほとんど選択肢は無くなる」
「僕はあんまりトレンドラインって引いたりしませんけど、日本製のアプリはほとんど全滅じゃないですか保存できるかってなると」
んだなぁ、と安藤は飲み干したビール缶を右手で (クシャ) と潰した。
まだまだ使えるツールはあるんだろうけどなぁ、とつぶやく。
「あとはサービス品とか」
「口座開くと商品がもらえるところもありますね、」
「なんかもらった覚えがあるけど覚えてないなぁ…」
「じゃあキャラクターはどうよ、」
「プライヌくんとか、トラリピくんとか…」
「いや、CMキャラクターよ。さいきんはキレイな女優さんがやってるだろ? よく知らんけど」
「アリかもしれませんねー、GMOクリックとか外為オンラインとか」
「そういや、大島優子がエロいCMやってたな」
「なんども見ました、サイト行って」
「とっかかりは何でもいいからひとまず口座を作って、デモってみるんだな」
「ですよね」
「そうするとやっぱりスマホのデモアプリがあるかどうかがけっこう大きいな、やっぱり」
「YJFX か、外為オンライン、LION FX、とかですね」
サイトを調べながらユキヲ。
「まあいくつか使ってみればいいじゃない、口座作るのはだいたいタダだしな」
「リアル口座は手続きがちょっと面倒ですけどね」
◆ ◆
「さておれは帰るぞ、」
「ハイ、おつかれさまでした」
「ホント、なんか疲れたわ」
ノートをバッグに片付け始める。
それを眺めていたユキヲ、ふいに思い出したように云った。
「あ、センパイ!! あと、スワップってのは、、、」
「もうしらん!!、帰るっ またなっ」
スタタと部屋を横切ると、
バタンとドアが閉まった。
よく呑んだなぁとつぶやきながら、ユキヲは床に転がったビール缶を数え始めた。
◆ ◆
今宵、ここまで。
■登場人物
ユキヲ:FXデモリトレード中。被害妄想はもう大丈夫?
安藤センパイ:多少は心得がありそうなFXトレーダー。それでけっきょくどこの会社を使っているんだろう…